Salesforceのオブジェクトとは

オブジェクトは、Salesforce活用の中核となる要素です。
この記事では、オブジェクトの基本概念、標準オブジェクトとカスタムオブジェクトの区別、および主要な標準オブジェクトについて解説します。オブジェクトを通じて、Salesforce内でのデータ管理の理解を深めていきましょう。

Salesforceのオブジェクトとは

Salesforceでの「オブジェクト」という概念は、データを整理して管理する上で中心的な役割を果たします。オブジェクトを、Excelに似たものと考えると理解しやすいです。

Excelでデータを管理する際、多くの場合、さまざまな情報が一つのシートに集約されます。

例えば、「A企業の10月の売上」のように、「取引先の情報」と「売上金額」の情報が一つのシート上で表現されます。これはこれでシンプルでわかりやすいのですが、情報量が増えてくるとシートをどんどん増やしていかなくてはならず、管理しきれなくなってきます。

Salesforceではこの課題をどうやって解決しているかというと、「取引先の情報」と「売上金額」を別々のシートで管理しています。

こうすることで、「問合せ」のシートや、「契約」のシートを作成する際であっても、一つの「取引先の情報」に紐づけて管理すればよく、情報を一元管理できるのです。

ここまでの解説で例えてきた「シート」こそがSalesforceの「オブジェクト」になります。

下図は取引先オブジェクトを中心として、問合せオブジェクト、商談オブジェクト、担当者オブジェクトといった複数の情報が一元管理されていることを示しています。

つまり、オブジェクトとはデータを一定の定義のもとにグルーピングして、一つの箱にまとめたものを指します。

なお、下図では担当者が取引先と問い合わせという2つのオブジェクトに紐づいており、どの取引先の誰からの問い合わせなのか、という2つ以上のオブジェクトを跨いだデータも管理できることを表現しています。

オブジェクトとレコードと項目

ここまで、オブジェクトをExcelのシートに例えて解説してきました。オブジェクトがシートだとすれば、シートの中の「行」(Excelの横軸)にあたるデータをレコードと呼びます。

Excelのひとつのシートに取引先リストを作ろうとした場合、上のセルから順にA社、B社、C社…と入れていくのが一般的です。

上図Excelの2行目、3行目、4行目がレコードです。オブジェクトの中で、レコードはそれぞれ別個のデータとして分けて保存されます。

レコードには会社名を表すA列、従業員数を表すB列といったように、項目を設定することで、A社固有の情報だけを登録したレコードが出来上がります。(Excelでいうと列が項目にあたります)

このように、オブジェクトには複数のレコードが保管され、レコードにはオブジェクトの定義に沿った項目データが格納されます。

ここまで、取引先オブジェクトを例に解説しましたが、考え方はほかのオブジェクトでも同様です。
例えば取引先は従業員数や住所といった会社情報を格納しますが、商談は商談フェーズや金額、受注予定日などの商談情報を格納します。

標準オブジェクトとカスタムオブジェクト

オブジェクトには大きく分けて「標準オブジェクト」と「カスタムオブジェクト」の二種類があります。両者の違いとしては、標準オブジェクトは、多くのビジネスで共通して必要とされる基本的なデータ管理機能を提供し、Salesforce導入初期からすぐに利用できます。

一方で、カスタムオブジェクトは特定のビジネスニーズや独自のプロセスに合わせてデータ構造を拡張する際に使用され、企業がSalesforceをカスタマイズして独自の環境を構築する場合に使用します。

標準オブジェクト

標準オブジェクトは、Salesforceがデフォルトで提供するオブジェクトであり、一般的なビジネスプロセスに頻繁に使用されるデータ構造を備えています。すべての組織に共通しており、追加のカスタマイズなしで導入初日から使用を開始できます。

Salesforceは毎年勝手に機能強化を行ってくれますが、標準オブジェクトをベースとして機能が拡張されていきますので、極力標準に寄せた運用をおこなうことで、バージョンアップのメリットを最大限享受することが見込めます。(なお、標準オブジェクトにカスタム項目を作成することは可能です。)

標準オブジェクトには様々な種類がありますので、代表的なものを紹介します。

  • 商談(商品・価格表)
    商談オブジェクトは、営業プロセスの各段階を管理するために使用されます。商談には、予想収益、クローズ予定日、商談の状態などの重要な情報が含まれます。さらに、付帯する標準オブジェクトである商品や価格表を活用して、具体的な製品やサービスの紐付けや、価格設定を管理することができます。これにより、営業チームはより細かな商談の管理と分析を行い、効果的な営業戦略を実行することが可能になります。
  • 取引先
    取引先オブジェクトは、顧客企業や組織の会社情報を管理します。企業名、業種、従業員数、住所などの基本情報のほか、取引先に関連づけることで商談や取引先責任者、契約などの関連情報を一元的に管理し、顧客関係の構築と維持をサポートします。
  • 取引先責任者
    取引先責任者オブジェクトは、顧客側の企業の担当者の個人としての情報を管理します。このオブジェクトには、担当者の名前、役職、連絡先情報が格納されます。取引先責任者レコード上で活動を入力すると、取引先の活動からも履歴を追うことができます。
  • リード
    リードオブジェクトは、潜在顧客の初期情報を記録するために使用されます。リードには、個人の名前、会社名、連絡先情報、興味のある製品やサービスなどが含まれ、リードを取引先責任者に変換することで、具体的な商談へと進展させることができます。リードはやや特殊な動きをするのが特徴で、商談化すると取引先責任者と取引先に分割されます。リードの状態では個人と会社情報がリードオブジェクト上に一か所で管理されている状態になります。
  • ケース
    ケースオブジェクトは、顧客からの問い合わせやサポート要求を管理するために使用されます。各ケースには、問題の説明、状態、優先度などの情報が含まれ、迅速かつ効率的な顧客サポートを実現するための機能を持っています。
  • 契約
    契約オブジェクトは、顧客との間で合意されたサービス条件や製品の販売条件を記録します。契約期間、価格条件、更新ポリシーなどの詳細情報を管理し、顧客との取引を正確に記録します。
  • 活動
    活動オブジェクトは、ユーザーの予定や行動を記録するために使用されます。これにより、営業担当者やサポート担当は、顧客とのコミュニケーションを効率的に管理し、生産性の向上を図ることができます。
  • ユーザー
    ユーザーオブジェクトは、自社のSalesforceにアクセスする、個々のユーザー情報を管理します。ログイン情報、役割、プロファイル設定などを通じて、ユーザーごとのアクセス権限やシステム内の権限を管理します。

カスタムオブジェクト

カスタムオブジェクトは、組織特有のニーズに合わせてSalesforce上で新たに作成されるオブジェクトです。カスタムオブジェクトを使用することで、標準オブジェクトだけでは対応できない特殊なビジネスプロセスやデータ構造をSalesforce内に構築できます。

例えば、特定の業界でのみ使用されるデータ項目を含むオブジェクトや、標準オブジェクト特有の動作の影響を受けたくない場合に使用します。

カスタムオブジェクトにも、項目の追加や削除、オブジェクト間のリレーションの定義など、柔軟なカスタマイズをおこなうことが標準オブジェクト同様、可能です。

まとめ

ここまで、オブジェクトの定義や、オブジェクトとレコード、項目の役割の違い、標準・カスタムオブジェクトの違いについて解説してきました。オブジェクトとはどんなものか、ご理解いただけたことかと思います。

オブジェクトをさらに知るには、リレーションの知識が不可欠です。こちらの記事で解説していますので、関心があればご覧になってみてください。