本記事では、Einstein Discoveryで何が出来るのか?機能を使用するためにはどんな作業ステップがあり、料金はいくらなのかといった、基本を理解するための情報を詰め込みました。
私が実際にTrailhead「Einstein Discoveryの基本」というモジュールをやってみた感想を含んでいますので、時間がなくなかなかTrailheadに取り組めないという方も、この記事を読むだけでクイックに追体験していただけることでしょう。
Einstein Discoveryとは?
Einstein Discoveryとはデータ分析基盤であるCRM Analyticsにアドオンして使用するライセンスで、誰もがアルゴリズムを記述する必要なく予測モデルを作成できる機能を持ちます。
CRM Analyticsで分析できるのは飽くまでも現状のデータです。
一方で、データは本来、現状を分析して未来をより良くするために使用されるものです。
そして、分析するという領域は知識・経験をもつ人材やデータサイエンティストなど専門技能が必要とされる領域でした。
この複雑で難解な分析という領域を、AIが人の代わりに行ってくれるというのがEinstein Discoveryのコンセプトです。
そして、下図のようにユーザーに直接、商談の成功率を届けるところまでを実現することが出来るのです。
※以前はSalesforceによるtableauの買収の影響で、SalesforceのBI製品はEinstein Analytics とCRM Analyticsという複数の呼称がありました。現在はTableau CRMに一本化されています。
実際の分析画面でイメージを膨らませよう
CRM Analyticsは通常のDeveloper Editinではなく、特別なDev環境を作成することで試してみることが出来ます。
CRM AnalyticsのDev環境登録はこちらから行います。
私の方で実際に操作してみましたので、早速、サンプルデータを使ってEinstein Discoveryがどんな動きになるのか見ていきましょう。Trailheadモジュールを通しでやってみた所感をもとに記載しています。
CRM Analyticsのデータセットを作成する
アプリケーションランチャーからAnalytics Studioを開き右上の作成、そしてデータセットを押します。
サンプルとなるデータをアップロードします。Trailheadのこの学習トピック内にサンプルCSVが置かれていました。
Trailheadに置かれていたopportunity_history.csvをアップロードします。下図が参考までに、アップロード元のCSVです。
アップロードするとこのように、データの中身をAnalytics Studio上で確認することが出来ます。自動的にデータ型を判別してくれています。データ型のディメンションは定性データ、基準は定量データを表します。
以下はAnalytics Studio にデータがアップロードされる際の進行状況の画面です。Einsteinが準備してくれています。
先ほどのCSVがデータセットとしてAnalytics Studioに取り込まれたことが確認できました。
Einstein Discoveryモデルを作成する
モデルとは将来の結果を予測するためのデータモデルを指します。Einstein Discoveryを使用するためのチューニング的なものになります。
データセット右上に、Einsteinがイラストでよく持っている量子っぽいアイコンがあります。こちらをクリックしてモデルを作成します。
すると、下図の「モデルを作成」画面が現れます。先ほどお見せしたCSVでIsWonという列がありました。「そのようにできるようになる」の箇所は最大化を選択しています。つまり、IsWonを最大化するにはどうすればよいのか?というのが下図の設定です。
次の画面ではモデル列を設定する画面となります。
モデル列とは何なのだろう?と思いましたが、モデルに含めるべきデータセットの列を選択することを指すようです。下図は手動を選んだ場合の画面です。これでモデルが作成できました。
Einstein Discoveryモデルをチューニングする
モデルが完成しました。リリースする前に、「すべてのアラートを表示」を押して、このモデルに問題がないか確認していきます。
アラートを開くと、以下のように懸念事項が列挙されます。
多重共線性という聞きなれない単語が表示されています。これは2 つ以上の変数 (金額とリードソース) の相関関係が高いため、結果に重複した影響が及ぶ可能性があることを示しています。アラートを無視を選択します。
また、下図のように金額をバケット化して、金額が一定のレンジ内のレコードをひとまとめにして分析した方が分かり易いぞ、という提案も出てきます。それは確かにその通り。「推奨バケットを適用」を選択し、次へを押します。
説明書きを入れて、「モデルをトレーニング」を押すと、再度AIがデータを確認するステップに移行します。終了すると、先ほど出ていたアラートは消えます。
モデルをさらに細かく調整するための設定画面も存在します。
モデルの調整は非常に細かく設定でき、そしてプレビューも可能です。なんとなくAIで予測してくれるが根拠は不明、みたいなことにはなり得ないので、導入後の社内調整の際にはどうしてこのような予測結果になっているのか?という点に対する説明責任を果たすことは出来そうです。
モデルをリリースする
モデルをリリースしていきます。
モデルは、今回はCSVからデータをアップロードしましたが、今後は本番環境で日々作成される生データを使って学習をさらに深めていきます。そのため、リリース時の手順として、下図のようにオブジェクトと接続するステップがあります。
今回は商談データを使用しますので、商談オブジェクトを選択しています。
データソースが外部にあるときには、「Salesforce オブジェクトに接続しないでリリース」を選択します。
オブジェクトを接続した後は、データセットの項目とSalesforceオブジェクトの項目をマッピングします。下図では商談から取引先の業種項目を対応付けています。このようなオブジェクトを跨いだマッピングも可能です。
準備ができたら、リリースしていきます。
リリース後は以下の画面になります。
ユーザーが直接Einstein Discoveryの恩恵を受けられるようにするためには、LightningレコードページにEinstein予測コンポーネントを配置します。
すると、下図の通り商談が成約する可能性が表示されました。この商談は40%決まる可能性があります。
※Einstein Discoveryの設定はこちらの公式ページが参考になります。
Einstein Discoveryを利用するには?
最後に、Einstein Discoveryを利用するために前提となる、料金や必要なライセンスについて確認していきます。
Einstein Discoveryの料金
Einstein Discoveryの料金については、こちらの料金表に記載がありました。1ユーザーあたり月額25ドル(3500円くらい)のようです。
以下、エディションやライセンスについて記載します。
使用可能なエディション:
- Salesforce Classic および Lightning Experience。
- Enterprise Edition、Performance Edition、Unlimited Edition、Developer Edition。
必要なライセンス:
- CRM Analytics Plus ライセンスまたはEinstein Predictions ライセンス。(有料オプション)。
権限セット:
- CRM Analytics Plus ユーザー権限セット: モデルの使用や予測の参照など、制限されたアクセス権を提供。
- CRM Analytics Plus システム管理者権限セット: モデルの作成、管理、リリースなど、すべての機能にアクセス可能。
データセットの準備:
- 分析に適したデータセットの作成が必要です。
- モデル作成には少なくとも400行以上の結果値が必要で、最大2000万行までのデータに対応しています。
- 列数の最小は3列、最大50列までです。
最後に、Einstein Discoveryに触れてみての感想になりますが、月額25ドルというのは安くはないな、と思います。
一方でSalesforceユーザーがCRMとしての利用において最終的にやりたいことというのは、ヨミを精緻に管理して、手持ちの商談で足りないならさらにヨミを追加する、最終的に予算を達成するということだと思います。
この営業活動の基本サイクルの中で、ヨミの精度を属人ではなくシステムに持たせ、誰がやってもほぼ同じ結果になる状態を作っていくということは、言うなればセールス組織の終着地点、一種の”夢”の実現と言えるでしょう。
この壮大な夢を実現するために、まずは特定の部署で小さくEinstein Discoveryを試してみる、ということであれば、先行投資として全然アリなのでは…?