Sales Cloud・Service Cloudの違いとは?目的や機能面で比較|Salesforce

Salesforceは、企業の営業活動や顧客サポートを効率化するために、さまざまなクラウドサービスを提供しています。その中でも「Sales Cloud」と「Service Cloud」は、多くの企業で利用されている代表的なソリューションです。

これら二つのクラウドにはどのような違いがあり、どのような目的で導入すべきなのでしょうか。

本記事では、Sales CloudとService Cloudの目的や機能面での違いを比較し、ニーズに合わせて自社がどちらを選ぶべきかを判断いただけるための情報を提供します。

Sales CloudとService Cloudの機能は大部分で被っている

セールスクラウドとサービスクラウドの機能を比較するためのベン図

Sales CloudとService Cloudの機能は大部分で被りがあります。上図で示した通り、主要なオブジェクトはどちらのライセンスでも使用することが出来ます。

オブジェクトとはSalesforce内のデータの箱を指します。

目的の違い

ただし、それぞれのライセンスは別々の目的を持っています。それぞれの目的を以下にまとめました。

  • Sales Cloudの目的:
    主に営業活動の効率化と売上の増加を目指しています。顧客情報の管理や商談の追跡、売上予測など、営業プロセスを最適化するための機能が豊富に揃っています。
  • Service Cloudの目的:
    顧客サポートの強化と顧客満足度の向上が主な目的です。顧客からの問い合わせ対応や問題解決を効率的に行うためのツールが充実しており、質の高いカスタマーサービスを提供することを支援します。

目的に紐づいて固有の機能が提供されている

Sales Cloudでは見積や商談の分割など、営業に特化した機能があります。一方でService Cloudは見積や商談の分割機能は使用できません。

このように、使えるオブジェクトのようなベースの部分はどちらでも使えるのですが、それぞれのライセンスの目的に紐づいて細部で固有の機能が提供される形となっています。

ここからは、Sales CloudとService Cloudそれぞれの特徴や機能を掘り下げていきます。

Sales Cloudの特徴

Sales Cloudは、Salesforceが提供する営業支援に特化したクラウドベースのCRMプラットフォームで、世界中で最も広く使用されている営業ツールの一つです。その主な特徴は、営業プロセスの効率化と売上向上を目指す多彩な機能にあります。

まず、顧客管理機能では、顧客の連絡先情報、取引履歴、コミュニケーション履歴を一元管理し、営業チームが顧客に対してパーソナライズされたアプローチを行えるようにサポートします。このデータはすべてクラウド上に集約され、常に最新の情報にアクセスできます。

次に、案件管理機能により、商談の進捗状況や見積もり、競合情報をリアルタイムで追跡・管理できるため、営業プロセスを組織的に進めることが可能です。これにより、成約率を高め、営業活動全体を最適化します。

さらに、予測と分析機能では、SalesforceのAIツール「Einstein」を活用し、売上予測や営業パフォーマンスの分析を支援します。これにより、経営陣や営業マネージャーは、データに基づいた迅速な意思決定を行うことができます。

Sales Cloudはまた、モバイル対応しているため、外出先からでも顧客情報や商談状況にアクセスでき、どこでも効率的に営業活動を行うことができます。このモバイル対応力が、現代の営業活動を支える大きな特徴の一つです。

これらの特徴により、Sales Cloudは企業の営業活動全般を包括的にサポートし、売上の増加と営業効率の向上に大きく貢献するプラットフォームです。

Sales Cloudの機能

Sales Cloudの機能を軸ごとに詳細に説明した表を作成しました。この表は、顧客管理、セールス特化機能、分析機能、コラボレーション機能、モバイル対応の5つの観点から、Sales Cloudの機能を総括して解説しています。

Sales Cloudの機能
顧客管理Sales Cloudは顧客の連絡先、取引履歴、コミュニケーション履歴を一元管理します。これにより、顧客との全てのやり取りを可視化し、営業チームは各顧客に最適なアプローチを計画・実行できます。また、顧客ごとの詳細なプロファイルが簡単にアクセスでき、クロスセルやアップセルの機会を見逃しません。
セールス特化機能見込み客管理や商談管理の自動化に特化した機能が充実しています。SalesforceのAI「Einstein」は、リードの優先順位を自動で評価し、最も見込みのあるリードを営業担当に割り当てます。さらに、ワークフローと承認プロセスの自動化機能により、営業活動を標準化し、時間のかかる手動作業を削減します。
分析機能レポートとダッシュボード機能により、リアルタイムで営業活動の進捗を可視化できます。Sales Cloudは、売上予測や営業パフォーマンスの分析に加え、AIを利用したインサイトを提供し、データに基づいた意思決定をサポートします。これにより、経営陣はタイムリーかつ効果的な戦略を策定できます。
コラボレーション機能Sales Cloudには、Chatterなどのコラボレーションツールが統合されており、営業チーム間のコミュニケーションやファイル共有がスムーズに行えます。また、ファミリー製品であるチャットツール、Slackとの連携も柔軟です。
モバイル対応Sales Cloudはモバイル対応を実現しており、営業担当者は外出先からでも顧客情報にアクセスできます。これにより、どこからでも商談状況を更新したり、ダッシュボードを確認したりできます。モバイルアプリは直感的なインターフェースで使いやすいです。

Sales Cloudの代表的な個別機能

セールスコンソール
セールスコンソールは、Salesforceの営業担当者向けに設計された統合ワークスペースです。顧客情報、商談、活動履歴など、必要なデータを一画面で確認でき、営業プロセスの効率化を支援します。タブ管理やレコードの並行操作が可能で、営業チームは複数の商談やリードを同時に管理し、迅速な意思決定と効果的な営業活動を行えます。

見積作成
見積機能はSales Cloudに含まれる機能で、文字通り営業担当者が顧客に対して価格見積もりをの帳票を作成・管理するためのツールです。
商談と連動して、複数の見積を一元管理し、価格交渉や条件の調整を効率的に行えます。
見積はPDF形式でエクスポートでき、顧客との交渉に役立てることができます。

商談パイプライン
商談パイプラインは、Sales Cloudで提供される機能で、営業プロセス全体を視覚的に管理するツールです。
各商談の進捗状況をリアルタイムで追跡し、フェーズごとに商談を分類して、ボトルネックを特定できます。
これにより、営業チームは成約に向けたアクションをタイムリーに実行し、売上予測を改善することが可能です。


Service Cloudの特徴

Service Cloudは、Salesforceが提供するカスタマーサポートに特化したクラウドベースのCRMプラットフォームで、世界中の企業が顧客サービスを向上させるために利用しています。その主な特徴は、顧客満足度の向上とサポート業務の効率化を目指す多機能なサービスにあります。

まず、インシデント管理機能では、顧客からの問い合わせやサポートリクエストを一元管理し、エージェントが効率的に対応できるようサポートします。この機能により、問い合わせの追跡が容易になり、顧客に迅速なサービスを提供できます。また、インシデントごとに対応履歴がクラウド上に保存されるため、いつでも過去の対応内容を参照することが可能です。

次に、ナレッジベース機能を活用することで、エージェントはよくある質問(FAQ)や問題解決のためのガイドを迅速に参照できます。これにより、顧客自身がセルフサービスで問題を解決することができ、サポートチームの負担が軽減されます。また、ナレッジベースはAIによって強化され、顧客の問い合わせ内容に最適な情報を自動的に提案する機能も備えています。

さらに、オムニチャネル対応では、電話、メール、チャット、ソーシャルメディアなど、さまざまなチャネルからの顧客問い合わせを統合し、一元管理します。これにより、顧客は自分の好むチャネルでサポートを受けることができ、エージェントは全てのチャネルを通じて統一された対応を行うことができます。AIツール「Einstein」は、顧客の感情や緊急度を自動的に評価し、適切なエージェントに割り当てることが可能です。

Service Cloudはまた、モバイル対応により、エージェントがどこからでも顧客対応を行うことができます。これにより、現場に出ているエージェントでも迅速に顧客対応が可能になり、サービスの質を維持しながら効率的に業務を進めることができます。直感的なモバイルインターフェースは、エージェントが素早く対応するために設計されています。

これらの特徴により、Service Cloudは企業のカスタマーサポート全般を強化し、顧客満足度の向上とサポート業務の効率化に大きく貢献するプラットフォームです。

Service Cloudの機能

Service Cloudの機能を軸ごとに詳細に説明した表を作成しました。この表は、顧客管理、サービス特化機能、分析機能、コラボレーション機能、モバイル対応の5つの観点から、Service Cloudの機能を総括して解説しています。

Service Cloudの機能
顧客管理Service Cloudは顧客の問い合わせ履歴、インシデント情報、サポートチケットの状態を一元管理します。これにより、カスタマーサポートチームは各顧客の過去の問題ややり取りを簡単に把握でき、迅速かつ的確な対応が可能です。また、顧客ごとのサポート履歴を参照することで、個別化されたサービスを提供できます。
サービス特化機能Service Cloudは、チケット管理やケース管理に特化した機能が充実しています。顧客からの問い合わせの緊急度を評価し、最適なエージェントに自動的にケースを割り当てることが可能です。また、オムニチャネル対応により、電話、メール、チャット、ソーシャルメディアなど複数のチャネルからの問い合わせを一元管理します。
SalesforceのAI「Einstein」を活用して、問合せへの回答を自社ナレッジをもとにして自動生成することも可能です。
分析機能レポートとダッシュボード機能により、リアルタイムでサポート活動の進捗や顧客満足度を可視化できます。Service Cloudは、エージェントのパフォーマンス分析やケース解決率のモニタリングが可能です。
コラボレーション機能Service Cloudには、ChatterやSlackなどのコラボレーションツールが統合されており、サポートチーム間や他部門との連携が円滑に行えます。これにより、複雑な問題や課題に対しても、チーム全体で迅速かつ効果的に対応することが可能です。特に、問題解決の際のリアルタイムな情報共有が強化されます。
モバイル対応Service Cloudはモバイル対応を実現しており、サポートエージェントは外出先やリモートワーク環境からでもケース管理や顧客対応を行うことができます。これにより、どこでも効率的にサポート業務を進めることができ、サービスレベルの向上が期待できます。モバイルアプリは使いやすく、エージェントの即応性を高めます。

Service Cloudの代表的な個別機能

サービスコンソール
サービスコンソールは、Salesforceのカスタマーサポートエージェント向けの統合ワークスペースです。
複数のタブを一元管理でき、効率的な作業の助けとなります。問い合わせが発生したときには、関連性の高いナレッジ情報を画面遷移なしで自動で表示できるため、必要な情報を素早く確認し、解答までの時間を短縮します。

ナレッジオブジェクト
ナレッジオブジェクトは、Salesforce内で顧客サポートや社内教育のための情報を整理・管理するためのオブジェクトです。
ナレッジベースに記事として保存され、検索可能な形式で提供されるため、ユーザーが迅速に必要な情報にアクセスできるようにします。ナレッジをサポートサイトなどに外部公開することも出来ます。

オムニチャネルルーティング
サービスクラウドのオムニチャネルルーティングは、顧客からの問い合わせ(電話、チャット、メールなど)を適切なサポートエージェントに自動的に割り振る機能です。
問い合わせの優先度やエージェントのスキルセット、稼働状況に基づいてリアルタイムで最適な担当者に振り分けることで、迅速かつ効率的なサポートを実現し、顧客満足度の向上につながります。


Sales CloudとService Cloudの違い

Sales CloudとService Cloudは、Salesforceの主要なクラウドソリューションであり、両者は多くの共通機能を持ちながらも、異なる目的に合わせて設計されています。

目的の違い

Sales Cloudは、主に営業活動の効率化と売上向上を目的としたツールです。顧客管理、案件管理、予測と分析機能を活用して、営業プロセス全体を最適化します。一方、Service Cloudは、顧客サポートの強化と顧客満足度の向上を目的としており、インシデント管理やナレッジベース、オムニチャネル対応など、サポート業務を効率的に進めるための機能が充実しています。

機能の違い

両クラウドは共通の顧客管理機能を持ち、例えばリード、取引先、連絡先といった基本的なオブジェクトはどちらでも使用できます。しかし、Sales Cloudには見積もり管理や商談分割などの営業特化機能があり、SalesforceのAI「Einstein」を活用して営業プロセスを支援します。対照的に、Service Cloudでは、問い合わせの緊急度評価やケース管理の自動化が可能で、顧客対応を円滑に進めるための機能が豊富です。また、Service Cloudでは、顧客からの問い合わせに対して、ナレッジベースを活用した迅速な回答が行えます。

導入シナリオの違い

Sales Cloudは、営業活動や商談管理が重要な企業に向いています。リードから商談成約までのプロセスを一元管理できるため、長期的な顧客関係の構築に役立ちます。一方、Service Cloudは、カスタマーサポートが重要な企業に最適で、複数のチャネルからの問い合わせを一元管理し、顧客満足度を高めることができます。これにより、迅速かつ統一されたサポート対応が可能になります。

価格面での違い

Sales CloudとService Cloud、両者の価格設定は同じですが、選択するプランに応じて提供される機能が異なります。企業の規模や目的に応じたプランを選ぶことが重要です。以下に、Sales CloudとService Cloudの価格プランを表で示します。

プランSales CloudService Cloud
Essentials3,000円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)3,000円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)
Professional9,600円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)9,600円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)
Enterprise19,800円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)19,800円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)
Unlimited39,600円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)39,600円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)

各プランの特徴

  • Essentials:
    • 小規模チーム向けの基本的なCRM機能を提供します。営業活動やサポート業務の基礎的な管理を行うのに適しています。
  • Professional:
    • Essentialsよりも高度なCRM機能を提供します。商談管理や予測、分析機能など、ビジネスの成長に必要な機能が充実しています。
  • Enterprise:
    • 最も一般的なライセンスで、カスタマイズ性と拡張性が高いプランです。複雑なビジネスプロセスを持つ企業に最適で、詳細な分析や高度なオートメーション機能が利用可能です。
  • Unlimited:
    • すべての機能にアクセスでき、最高のサポートとカスタマイズオプションを提供します。業界トップクラスの機能を必要とする企業向けです。

どちらのライセンスを選ぶべきか

Sales Cloudが向いている企業

営業活動の強化とプロセスの最適化を重視する企業
Sales Cloudは、営業活動の効率化を目的としたツールが豊富に揃っています。顧客情報や商談履歴、見積もり管理を一元化することで、営業担当者は必要なデータにすぐにアクセスでき、生産性を大幅に向上させます。さらに、営業活動を標準化し、統一されたプロセスを確立することで、チーム全体のパフォーマンスも向上させることが可能です。既存のビジネスプロセスを改善し、営業チームのパフォーマンスを最大限に引き出したい企業には、Sales Cloudが最適な選択です。

高度なデータ分析と売上予測を活用して戦略を立てたい企業
Sales Cloudの特徴的な機能の一つが、SalesforceのAI「Einstein」を活用した売上予測機能です。この機能を利用することで、過去のデータを基に将来の売上を予測し、データに基づく営業戦略を展開できます。過去の商談データを分析することで、次の成功確率が高い商談やクロスセルの機会を見極め、営業活動の質を向上させることができます。こうしたデータ分析に基づく戦略的アプローチを導入したい企業には、Sales Cloudが最適です。

成長企業や大規模な営業チームを持つ企業
Sales Cloudは、企業の成長に応じて柔軟に機能を拡張できるスケーラビリティに優れています。成長著しい企業や複数の営業チームを持つ大規模企業では、複雑な営業プロセスを効率的に管理し、複数チーム間のデータ統合が重要です。Sales Cloudは、カスタマイズ性の高さと豊富なAPI連携により、企業固有のニーズに合わせたシステム最適化が可能です。

Service Cloudが向いている企業

カスタマーサポートチームを運営し、効率化を目指す企業
Service Cloudは、複数のサポートチャネルを統合して一元管理し、カスタマーサポート業務の効率化を図ります。顧客からの問い合わせを迅速かつ的確に処理するためのインシデント管理機能やケース管理ツールが充実しており、特に問い合わせ件数が多い企業にとって不可欠な機能です。さらに、顧客問題のスムーズな解決を支援するワークフロー自動化やエージェントの負荷軽減を実現するAI機能も備わっており、サポート業務の効率を向上させます。

顧客満足度の向上を企業戦略の中心に据えている企業
Service Cloudは、顧客満足度を向上させるための機能が豊富です。オムニチャネル対応によって、顧客は自分の好むチャネルでサポートを受けることができ、迅速な対応が可能になります。さらに、AIを活用したナレッジベースの最適化やチャットボットの導入により、顧客の自己解決率を高め、エージェントの対応を補完します。カスタマーサポートを顧客との重要な接点と位置付ける企業にとって、Service Cloudは有効なツールです。

グローバル展開をしており、多言語対応が必要な企業
Service Cloudは、多言語対応が可能で、グローバルに展開する企業にも効果的です。世界中の顧客に対して一貫したサポートを提供するためのツールが揃っており、各国の拠点で同一のサポートプロセスを展開することが可能です。これにより、高品質のカスタマーサービスを世界規模で提供することができます。

まとめ

Sales CloudとService Cloudは、それぞれの目的に応じた機能を持つ強力なツールです。Sales Cloudは営業活動を、Service Cloudは顧客サポートを最適化するために設計されており、企業の特定のニーズに応じて選択することが求められます。どちらを選んでも、Salesforceの高度な機能を活用することで、顧客との関係を強化し、ビジネスの成長を支援することが可能です。

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