SalesforceとKINTONE導入時の違いを解説

本記事では、SalesforceとKINTONEの両方のシステム管理者を経験した筆者が、両者の違いについて詳しく解説します。顧客情報の管理基盤としてどちらを選んだらよいのか悩んでいる方や、ソリューションの比較検討中の方にお役立ていただけると幸いです。

Salesforceとは

Salesforceは、顧客関係管理(CRM)ソフトウェアのデファクトスタンダードとして広く知られるクラウドベースのプラットフォームです。

企業が顧客との関係を管理し、営業、マーケティング、カスタマーサービスのプロセスを効率化するためのツールです。Salesforceの主な特徴は、その柔軟性と拡張性です。ユーザーは、カスタムアプリケーションの作成や、既存のアプリケーションの改修をノーコードで簡単に行うことができます。他ツールとのAPI連携も可能です。

また、AppExchangeというマーケットプレイスから追加の機能やアプリを購入することも可能です。

グローバルに稼いだ潤沢な資金を年3回の大幅バージョンアップにつぎ込んでおり、進化し続けているツールです。

KINTONEとは

KINTONEは、サイボウズ株式会社が提供する業務アプリケーション開発プラットフォームです。

ユーザーはプログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップ操作で簡単に業務アプリケーションを作成することができます。

KINTONEの特徴は、そのユーザーフレンドリーなインターフェースと高いカスタマイズ性です。

例えば、営業管理、顧客管理、プロジェクト管理など、様々な業務プロセスを効率化するためのアプリケーションを短時間で構築できます。

また、他のシステムやサービスと連携するためのAPIも豊富に用意されており、データの連携や自動化を容易に行うことができます。KINTONEはSalesforce同様、CRMとして活用することが出来ます。

SalesforceとKINTONEの共通点

ここまで記載した通り、SalesforceとKINTONEには多くの共通点があります。どちらもクラウドベースのプラットフォームであり、企業が効率的に業務を管理できるためのツールです。

違いの比較に入る前に前提を揃えるため、まずは主な共通点をピックアップしました。

クラウドベースのプラットフォーム

両者ともクラウドベースで提供されており、インターネット接続があればどこからでもアクセス可能です。これにより、リモートワークや外出先からのアクセスができるほか、PCへのインストール作業や更新などの手間はかかりません。

高いカスタマイズ性

SalesforceとKINTONEはどちらも高いカスタマイズ性を持っており、ユーザーのニーズに合わせて様々なアプリケーションやワークフローを作成することができます。Salesforceはフロー(ノーコード開発機能)やApex(コーディング)を使用した高度なカスタマイズが可能であり、KINTONEはドラッグ&ドロップやJava Script(コーディング)でカスタマイズできます。

API連携

両プラットフォームともに豊富なAPIを提供しており、他のシステムやサービスとの連携が可能です。余談ですが、私が過去在籍していた企業ではSalesforceとKINTONEを併用しており、両者をAPIで連携して活用していました。SalesforceとKINTONEはお互いにAPI連携することも可能です。

コミュニティとサポート

SalesforceとKINTONEは共に、強力なユーザーコミュニティとサポート体制を持っています。ユーザーはコミュニティフォーラムやサポートドキュメントを通じて情報を共有し、問題解決のためのサポートを受けることができます。

スピーディな導入

両プラットフォームはクラウドベースであるため、物理的なインフラの準備が不要で、迅速に導入することができます。また、定期的なアップデートや機能追加が自動的に行われるため、最新の機能を常に利用することができます。

追加機能のマーケットプレイス

SalesforceとKINTONEは共に、追加機能を提供するマーケットプレイスを持っています。Salesforceには「AppExchange」、KINTONEには「拡張機能」があり、これらのマーケットプレイスを利用することで、さまざまなアプリや拡張機能を簡単に導入することができます。これにより、企業は自社のニーズに合わせたソリューションを迅速に取り入れることが可能です。

SalesforceとKINTONEの違い

以上のようにSalesforceとKINTONEのカバーしている機能は大きく被りがあります。ただし出来ることの深さに違いがあります。ここからは、両者の違いについて詳しく比較していきます。

活用の難易度

Salesforceは主に複雑な業務プロセスをシステム化したい企業向けに設計されています。

一方、KINTONEはシンプルな業務プロセスの管理を必要とする企業に適しています。

どちらも使いやすいソリューションではありますが、Salesforceは高機能、KINTONEはより初心者向けに易しく作られています。

コスト

SalesforceはKINTONEよりも数倍のコストがかかります。世界のトップ企業と同じ高機能(生成AIなど)を使用できることを自社の競争力としてみなすならば、Salesforceを単純に高いとは言えませんが、そこまでの機能が必要ない企業にとってはKINTONEの方がコスト面で魅力的だと言えます。

Salesforceの料金

プラン説明価格特徴
Starterマーケティング、営業、サービスを扱う小規模なチーム向けのシンプルなCRMスイート3,000円(税抜)/ユーザー/月(月間/年間契約)シンプルな設定とオンボーディング
リード、取引先、コンタクト、商談の管理
メール連携機能と活動の自動記録機能
Professional営業向けのCRM9,600円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)売上予測管理
カスタマイズ可能なレポートとダッシュボード
見積もりと契約
Enterpriseより高い柔軟性を備えた営業向けCRMとWeb API19,800円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)Professional版の全機能に加え、高度なパイプライン管理と案件のインサイト
テリトリーの管理と計画
ワークフローと承認
Unlimitedインテリジェントな自動化と開発者支援が組み込まれた営業向けCRM39,600円(税抜)/ユーザー/月(年間契約)Enterprise版の全機能に加え、予測AIの活用
会話型インテリジェンスとセールスエンゲージメント
Premier Success PlanおよびFull Sandbox
公式サイトより

KINTONEの料金

プランライトコーススタンダードコースワイドコース
価格月額780円 /1ユーザー
年額9,170円/1ユーザー
月額1,500円 /1ユーザー
年額17,640円/1ユーザー
月額3,000円 /1ユーザー
年額36,000円/1ユーザー
最小契約ユーザー数5ユーザー5ユーザー1,000ユーザー
アプリ数~200個~1,000個~3,000個
スペース数~100個~500個~1,000個
外部サービスとの連携、
プラグイン、および拡張機能
×
公式サイトより

カスタマイズと拡張性

Salesforceはフローというノーコードのオートメーション機能により、○○したら××する、というトリガー機能や、独自の入力画面で1か所入力したら全件更新される機能、定期実行のバッチ機能などを簡単に作成することが出来ます。

KINTONEはノーコードで上記のような機能を作成することは出来ず、拡張機能を購入しない限りはJavaScriptによるプログラミングがマストになります。

KINTONE利用において社内にJavaScriptの技術者がいない場合はエンジニアを雇用・外注する必要がありますが、Salesforceの場合はノーコードなので極端な話、誰でもオートメーションを作れます。このような点も費用差分として考慮しておきたいですね。

分析

Salesforceはレポートとダッシュボードという分析機能があり、Salesforce内の複数のデータベースを跨いで柔軟な集計が可能です。また、まったく切り口の違うレポートをダッシュボードに集約して表示して、1ページで全社のあらゆる進捗を管理することができます。

上記の機能はKINTONEでは「一覧」という機能にあたります。Salesforceを使ってからKINTONEの一覧を使うと出来ないことが非常に多く、結局エクスポートしてExcelで管理する場合が多かったです。

裏を返せば、SalesforceはSalesforce上だけで完結出来ますが、KINTONEもエクスポートして手元で計算すれば同じことが出来るので、スピード感に対して妥協できるならばKINTONEでも変わりはないということです。

エコシステムと学習

Salesforceは世界中で広く使われており、豊富な参照文献とサポートが利用可能です。特に、trail headという無償の自己学習プログラムが便利で、やる気さえあれば無限に学ぶことが可能です。また、AppExchangeというグローバルなマーケットプレイスを通じて、多数の拡張機能を簡単に導入できます。

KINTONEも自社のマーケットプレイスを持っており、追加のアプリや機能を導入することができます。しかしSalesforceに比べるとエコシステムの規模は小さいです。KINTONEの学習は、公式の動画が用意されています。

KINTONEは国内企業が様々なブログで情報提供しています。

データ管理とセキュリティ

Salesforceは高度なデータ管理機能とセキュリティ設定を提供します。大企業の複雑なデータ保護要件に対応できるため、多くの大規模プロジェクトで採用されています。KINTONEも基本的なデータ管理とセキュリティ機能を備えていますが、Salesforceほどの複雑で柔軟な権限設定には対応していないです。

SalesforceとKINTONEの技術仕様の具体例

Salesforceはひとつのアプリの中に複数のデータベースがあります。KINTONEは1つのアプリ=1つのデータベースです。

アプリとデータベースの画面

Salesforceはアプリ内で複数のオブジェクトを跨いで分析できます。KINTONEは基本的には現在のアプリ内の分析しか出来ず、アプリを跨いだ集計は制限されます。

分析画面

Salesforceは画面のレイアウトを自由に変えて、ユーザーが使いやすい画面を作ることが出来ます。KINTONEは、全体的なレイアウト自体は変えられず、項目の並び替えが可能です。

レコードのレイアウト変更画面

Salesforceは下図のようなノーコードの「フロー」を使用して様々なオートメーションを自在に作成することで、入力の効率化やデータの整合性を高く保つことが出来ます。KINTONEの場合はフローに相当する機能はなく、拡張機能やJava Scriptでの開発が必要です。

ノーコードのオートメーション画面

Salesforceは権限設定をロールという組織階層に応じて設定したり、プロファイルという権限グループを使用して、個別のデータベース・項目単位で細かな閲覧・編集設定が可能です。また、権限セットを使用して権限を一部切り出して付与することも可能です。

KINTONEは何事もユーザー・組織・グループ単位でアプリ単位で権限設定しますので、複雑な権限設定をしていくと整合性を取るのが難しくなってくる場合があります。

権限設定画面

まとめ

SalesforceとKINTONEを両方並べて使用すると、機能面ではどうしてもSalesforceの方が勝っています。

一方で、費用対効果であったり、使う側の一般ユーザーのITリテラシーによってはKINTONEに軍配があがることもあります。

導入時は、自社で使用したい機能・費用・自社のユーザーが使いこなせるかといった点が検討のポイントとなるでしょう。

※本記事の作成にあたりこちらの記事も参考にさせていただきました。

 ・キントーン(kintone)と セールスフォース(Salesforce)の違い