Salesforceの個人取引先は、個人と直接ビジネスを行う際に便利な機能です。本記事では、個人取引先の基本的な概念、有効化の手順、データのインポート方法、そして法人取引先から個人取引先への変更方法について詳しく解説します。また、個人取引先を利用する際のデメリットにも触れていきます。
個人取引先とは
Salesforceの個人取引先は、個人との取引を管理するための特別なデータの持ち方です。通常の取引先(法人取引先)と異なり、個人取引先は会社や組織ではなく、一人の個人を取引先として扱います。この機能は、B to C(企業対消費者)のビジネスモデルにおいて、顧客情報をシンプルに管理するのに役立ちます。
個人取引先を有効化してから、見慣れた取引先オブジェクトを開いてリストビューを見ると、法人の取引先(例:株式会社山川商事)と、個人の取引先(例:磯野益男)が共存している状態になります。もちろん、リストビューを法人と個人で分ければこのような状態は解消されますが、管理する側にとっては技量が求められるシステム構成ではあります。
個人取引先は、顧客一人ひとりの購買履歴やサポート履歴を追跡できるため、よりパーソナライズされたサービスを提供することができます。例えば、リテール業界やサービス業などで、顧客一人ひとりに対するCRMデータを蓄積・活用するために利用されることが多いです。
この機能は、Professional Edition、Enterprise Edition、Performance Edition、Unlimited Edition、および Developer EditionのSalesforce組織であれば追加費用無く使用することが出来ます。
個人取引先を使う意味
個人取引先はB to Cのビジネスモデルであればフィットすることが多いデータの持ち方ですが、一度有効化したらもとには戻れないなど制約も多いです。
どうしても商談の取引先として個人を使用したい、というニーズがある場合にのみ、個人取引先の有効化を検討することになるでしょう。
商談の取引先として個人を使用する場合というのは、個人に紐づけて複数の商談が発生する場合や、代理店経由の商談と個人に直販の場合の商談を同一のレポートで見たい場合などを指します。
もしくは、toBとtoCの取引が混在する場合にも個人取引先は有用です。例えばNGOやNPOで企業からの寄付金と、個人からの寄付金が混在する場合には個人取引先が有効になっていないと不都合です。個人取引先を使わずにダミー取引先を作ることになったり、別々のオブジェクトで管理することになり、一気通貫のレポート化が難しくなるからです。
さらに、リードオブジェクトを使っている場合には、取引開始の際に必ず取引先が作成(または紐づけ)されるため、個人取引先を有効化しないと、一つのダミーの取引先に大量の個人が紐づいてパフォーマンスが悪化します。
個人取引先の仕組み
個人取引先を有効化すると、下図の通りオブジェクトマネージャーに個人取引先オブジェクトが表示されるようになります。
ただし、個人取引先オブジェクトというものは実際には存在しません。取引先と取引先責任者を「1:1」で組み合わせて、ワンセットにしたものを疑似的に個人取引先オブジェクトと呼んでいるのです。
なので、個人取引先を作成すると、取引先責任者も自動的に1つ作成されます。
個人取引先を使用する場合のデメリット
個人取引先機能は有用なものなのですが、利用するにあたって管理側でわかっていなくてはならないことが多々あります。
こちらのHelpとともに、特に気を付けておきたい事項を記載します。
- 一度有効化したらもとには戻せない。
- 個人取引先を作成したら、取引先責任者も作られるのでディスク容量の消費が激しくなる。
- 取引先に設定している自動化が個人取引先にも適用される点に考慮が必要。
- 個人取引先を取引先階層に含めることはできない。
- Lightning Experience では、会社項目に値がないリードは個人取引先に変換される。会社項目に値があるリードは法人取引先に変換される点に考慮が必要。
個人取引先を有効化する方法
設定画面にてサイドメニューに個人取引先と入力します。サイドメニューに個人取引先が表示されますので、クリックすると下図の画面になります。
①の組織への影響を表示を押すと注意事項が表示されます。問題なければ次に進みます。
②では、取引先レコードタイプを作成します。すでにレコードタイプが1つ以上あれば、ここで新たに設定する必要はありません。
下図の緑チェックは最初からチェックになっていると思います。確認の上、最下部の「個人取引先を有効化」をクリックします。
これで、個人取引先が有効化されました。
有効になった個人取引先の挙動を確認
個人取引先を有効化すると、取引先を新規ボタンから作成しようとすると、下図のようにレコードタイプが分かれた形で表示されます。
そして個人取引先を選択して次に進むと、個人用の作成画面に進みます。
ちなみに、ここで表示されるレコードタイプの名称は個人取引先オブジェクトマネージャーから編集可能です。また、個人取引先のページレイアウトやコンパクトレイアウトもここから編集します。
カスタム項目を作成する場合、取引先・取引先責任者のどちらに作成するのが望ましいのか
取引先と取引先責任者のどちらにカスタム項目を作っても、個人取引先レコード上は普通に使用することが可能です。数式やフロー、Apexでの使用も問題ありません。
個人取引先へのカスタム項目の際、取引先でも取引先責任者に作っても個人取引先には表示されるのであれば、一見どちらに作っても良さそうです。どちらに作成するのか判断基準はあるのでしょうか?
個人に関する項目は取引先責任者に統一した方が良いです。法人の取引先には通常通り法人の取引先項目を作る必要があるので、項目数の上限などの懸念もあるからです。また、Account Engagementなどからメールを送信する際にも取引先責任者に項目があった方が便利です。
データローダーで個人取引先をインポートする方法
データローダーで個人取引先をインポートする際は、インポートファイルのレコードタイプで取引先を個人または法人の取引先に設定することができます。
個人取引先としてインポートする場合、レコードタイプIDは、オブジェクトマネージャーで個人取引先を開き、URLから取得します。
また、インポート時は取引先オブジェクトに対してインポートします。
注意: 名と姓または名前 (氏名) をマッピングすることはできますが、両方をマッピングすることはできません。いずれかを選択する必要があり、選択しない場合は挿入操作が失敗します。インポートに名と姓を使用する場合は、姓のみが必須です。
法人取引先から個人取引先にレコードタイプを変更する
詳細な手順は、こちらのHelpからSetting Up Person Accountsを参照します。
概要としては、以下を確認の上で、手元のCSV上で、個人取引先のレコードタイプに差し替えてからデータローダーで更新をかけることで実現できます。
- 各取引先には1つの取引先責任者が必要です。複数の取引先責任者を持つことはできません。
- 取引先と取引先責任者は、同じレコード所有者でなければなりません。
- 取引先と取引先責任者は、同じ通貨値を持っている必要があります。
- 取引先の「親取引先」項目は空である必要があります。
- 取引先責任者の「上司」項目は空である必要があります。
- 取引先が他の取引先の親取引先として設定されていないこと。
- 取引先責任者が他の取引先責任者の「上司」として設定されていないこと。
まとめ
この記事では、Salesforceの個人取引先について説明しました。
個人取引先は、主にB to Cビジネスで個人顧客を管理するための機能です。その利点と共に、デメリットも理解することが重要です。個人取引先を有効化する手順や、データローダを使用したインポート方法も解説しました。
また、法人取引先から個人取引先へのレコードタイプ変更についても触れました。
利用開始の際は、レポートやリストビューに法人個人が混在するので、ユーザーが結構戸惑う可能性があります。権限でうまく切り分けるか、しっかり丁寧に説明して用途に応じて閲覧方法を変えてもらうような事前準備が必要になってくると思います。