Salesforceバージョンアップ時のSandbox プレビューの準備方法

Salesforceのメジャーバージョンアップは、新しい機能が追加されたり、既存の機能が改善される毎年恒例のビッグイベントです。新しいバージョンは期日がくると強制的に適用され、これまで使っていた設定やカスタマイズに影響が出ることがあります。

この記事では、Salesforceのバージョンアップについての基本知識から、バージョンアップ時のタスク、特に「サンドボックスプレビュー」の重要性や設定手順を紹介します。

Salesforceメジャーバージョンアップとは

Salesforceでは年に3回、2月、6月、10月にメジャーバージョンアップが行われます。それぞれ毎年、Spring 24・Summer 24・Winter 24などと「季節+西暦」で表されます。後から振り返って「Summer 24」だったら2024年夏のバージョンアップで追加された機能、という使い方をします。

メジャーバージョンアップの詳細な内容は、期日が近くなると「リリースノート」というページで公開されます。こちらは参考までに、「Salesforce Spring 24 リリースノート」です。

また、リリースノートはかなり詳細なので、「Release Overview Deck」というサマリ版の資料もあります。

エンタープライズや導入・保守ベンダーに所属の方でなければ、変更点を知るという意味ではRelease Overview Deckでも十分かもしれません。参考までに、こちらはSpring 24のRelease Overview Deckです。リリースノートよりもやや後に公開され、Trailblazer Communityのカスタマーサクセス日本などで投稿してくれる方がいらっしゃいます。

Summer 24のリリースノートは本記事を執筆時点では公開されていません。以下のサイトに英語ですがスケジュールが載っていますので確認いただけます。Salesforce Admins

メジャーバージョンアップの注意事項

これらのアップデートでは新機能が導入され、機能が強化されますが、一部既存の環境に影響が出る可能性もあります。たとえば、新機能が既存のカスタマイズと競合することや、新しいバージョンによって既存のコードが期待通りに動作しなくなることが考えられます。

これらのリスクを事前に確認し、適切に対処することはシステムの安定性と業務の継続性を保つために重要です。

メジャーバージョンアップへの対応を行うためには、アップデート前にサンドボックスでプレビューを行い、変更点を十分に検証することが推奨されます。

Sandbox Preview(サンドボックスプレビュー)とは

サンドボックスとは、実際の運用環境とは別に設定されるテスト環境のことです。この環境内で主に既存機能のカスタマイズや新機能の追加など、様々なテストを行います。

サンドボックスプレビューとは、Salesforceのメジャーバージョンアップ前にサンドボックス環境で新バージョンを先行して試す機能を指します。このプレビューを利用することで、新バージョンに含まれる変更点や新機能を本番環境へ適用する前に体験し、テストすることができます。

Sandbox Preview(サンドボックスプレビュー)の注意事項

注意しておきたいのは、以前に作成したSandboxは強制的にプレビューが適用されるか、適用されないかを分けられるという点です。以下はSandboxの設定画面ですが、「リリース種別」の列で「プレビュー」と「プレビュー以外」に分かれます。プレビューと表示されているSandboxだけがサンドボックスプレビューを適用されます。

この区分けは自分でプルダウンで選ぶ、ようなことは出来ず自動で決まります。

Sandboxのリリース種別を解説

プレビューが自動的に適用されて困ることとしては、変更セットでのリリースが失敗する可能性が高まることです。なぜなら、Salesforceは送信変更セットと受信変更セットの両組織のバージョンを合わせることを推奨しているからです。

プレビュー期間中は、本番組織が旧バージョン、プレビューSandboxが新バージョンとなりますので、非推奨の環境でのリリースとなってしまいます。詳しくはこちらのHelpを参照ください。

対策としては、Sandbox プレビューの開始期日後にSandboxを作成すれば、旧バージョンのSandboxを作成できます。

Sandbox プレビューの開始期日「前」「後」の対応による影響

プレビュー環境でぜひテストしたいが、現在Sandboxが一つもなかったり、今あるSandboxのリリース種別が「プレビュー以外」になっている場合は注意が必要です。詳しいプレビュー手順はこちらのHelpから確認できます。

プレビューの開始期日「前」

Sandbox プレビューの開始期日前にSandboxを新たに作成しておくか、既存のSandboxを更新しておく必要があります。さらに、Summer24の場合はSandbox プレビューの開始期日は5/10なので、それ以前に余裕をもってSandboxの作成や更新が完了していなければプレビューが適用されません。

FullsandやPartialsandの場合は容量が大きいので作成や更新に時間がかかりますし、直前になると世界中で駆け込みSandbox作成が発生し処理が遅れることが予想されます。Salesforce社としても、カレンダーに登録しておくことを推奨しています。

プレビューの開始期日「後」

また、せっかくプレビュー環境のSandboxを手に入れても、Sandbox プレビューの開始期日後にリフレッシュしてしまうと旧バージョンに戻されてしまいますので、要注意です。

なお、メジャーアップデート後はSandboxのリリース種別が「プレビュー以外」であったとしても強制的に新バージョンに切り替わります。

Sandbox プレビューでの実際のテスト方法

Sandbox プレビューを入手できたら、記事の前半で記載したリリースノートやRelease Overview Deckをチェックして、めぼしい機能をテストします。

また、既存のコードが問題なく動作するかの確認も行っておくとよいでしょう。具体的には、フローやapexを一通り起動してみることです。

もし動作がおかしい箇所があれば、サポートや保守ベンダーに問い合わせての確認が必要になるかもしれません。そして、事前テストをしていなければ、バージョンアップが強制適用された後に対応が後手に回ってしまいます。

まとめ

本記事ではSalesforceのメジャーバージョンアップとは何なのか、そしてバージョンアップに備えてサンドボックスプレビューへの理解を深める内容を紹介しました。

記事内の例としてはSummer24を取り扱っていますが、年度問わず普遍的に使える知識になります。