Salesforce Data Cloud(データクラウド)とは?3つの役割とAI活用について

Data Cloudは、企業が持つデータを統合して、顧客の利便性向上に活用するためのSalesforce製品です。本記事では、データクラウドの基本概念から、実際のデータ収集や統合の方法、さらにAIと連携してその力を最大限に引き出す方法について解説します。最後に、Data Cloud Provisioningを無料で試す手順も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

Salesforce Data Cloud(データクラウド)とは?

Salesforce Data Cloud(データクラウド)は、企業が保有する多様なデータを、顧客データを中心として統合し、リアルタイムで・あらゆる業務で活用するためのデータテクノロジーです。

例えば、Salesforceで持っている顧客情報とECサイトで持っている顧客情報を「ユニファイドプロファイル」として統合し、一意の個人を作成します。そのうえで、ユニファイドプロファイルに対してMAやWEB接客ツールなどで蓄積したアクティビティデータを統合することで、顧客に関するデータを集約します。

さらに、従来このような機能は一定周期のバッチ更新でデータ連携されるのが常でした。そのため、リアルタイムで顧客と接する担当者は、常にデータが古い可能性を考慮しながらコミュニケーションを取る必要がありました。

Data Cloudはリアルタイム連携が可能であるため、元データを確認しに行くような作業を省いて、実際の顧客との商談時やサポート対応時に最新情報として活用できる点が非常に強力です。

Data CloudとCDPの違い

Data Cloudは、CDP(顧客データプラットフォーム)の機能を基盤とし、マーケティング、営業、サービスなど、さまざまなビジネス領域でのデータ活用を支援します。

従来のCDPは、主に顧客データを収集・統合し、統一された顧客プロフィールを作成することで、マーケティングや営業のパーソナライズを支援するツールとして知られています。

しかし、Salesforce Data Cloudは、CDPの機能を超えて、顧客データ以外のデータも統合できる点が特徴です。データクラウドは、Webサイトの行動履歴やアプリの利用データ、CRMシステムの顧客情報だけでなく、サプライチェーンデータや製品データ、さらにはIoTデバイスからのデータなど、あらゆる種類のデータを一つのプラットフォームに統合することが可能です。

データクラウドの役割3つ

データクラウドで出来ることは多岐に渡ります。snowflakeやgoogle BigQuery、AWS Redshiftのデータをロードすることなくリアルタイムで連携し、連携されたデータはSalesforceで使用することはもちろん、MetaやGoogleなどの広告に使用することも可能です。

このような機能をデータ収集、データ統合、データ活用の3つの要素に分けて解説します。

役割1.データ収集

Data Cloudでは、簡単な操作で多様なデータソースから情報を収集し、統合することが可能です。

下図のようなUIで、Salesforceからクリック操作のみで複数のテーブルを取り込むことが出来ます。

データ収集画面

さらに、Data CloudはSalesforceだけにとどまらず、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)など、主要なクラウドサービスともシームレスに連携することができます。これにより、異なるプラットフォームに保存されているデータを一元的に収集し、統合することが可能です。

データ収集画面2

また、企業が複数のSalesforce組織を使用している場合にも、Data Cloudは大変便利です。

異なる部門や地域で別々に運用されているSalesforce組織をData Cloudで接続し、統一された顧客データベースを構築することができます。これにより、企業全体で一貫した顧客管理が実現し、各部門が持つ顧客データを最大限に活用できます。

たとえば、地域ごとに異なるSalesforceインスタンスを運用しているグローバル企業が、顧客データをData Cloudに統合することで、世界中の顧客に対して一貫したパーソナライズされた体験を提供できるようになります。

役割2.データ統合

収集したデータは、そのままでは活用が難しい場合が多くあります。
例えば、異なるデータソースから集められたデータは、属性情報やデータ構造が異なることが一般的です。
また、同一顧客のデータが重複しているケースもあり、データを正しく統合しなければ、誤った分析結果や非効率なマーケティング活動に繋がるリスクがあります。

Salesforce Data Cloudには、こうした課題を解決するための大変便利なデータ統合機能があります。GUIベースでの操作が可能で、技術的な知識がなくても複雑なデータ統合作業を直感的に進めることができます。
たとえば、Salesforceの外部から取り込んだデータは、異なるシステムでバラバラに管理されている顧客IDが存在するかもしれません。これらの顧客IDを統合する際には、Data Cloudがルールベースで自動的に処理を行い、一貫性のある顧客プロフィールを作成します。(下図参照)

データ統合画面

さらに、Salesforce Data Cloudでは、複数のデータソースを組み合わせることが可能です。
例えば、Webサイトの行動データとCRMシステム内の顧客データを突合させ、顧客ごとにスコアを振り当てることができます。
このスコアは、営業やサービス担当者が顧客との接点を持つ際に有用です。
顧客がどのような行動を取っているのか、どの程度の興味を示しているのかを事前に把握できるため、よりパーソナライズされた対応が可能になります。

データ統合画面2

役割3.データ活用

Data Cloudのデータ統合機能は、リアルタイムでのデータ更新にも対応しており、これにより企業は常に最新の顧客情報を把握することができます。

顧客がどのような行動を取っているのか、どのような状況にあるのかを即座に反映できるため、企業はタイムリーかつ的確な対応が可能となります。

これにより、顧客に対してよりパーソナライズされたサービスや提案を提供できるため、顧客満足度の向上が期待できます。また、営業やマーケティングの活動がより効率的になるため、リソースの最適化にも寄与することが考えられます。

さらに、Salesforce Data Cloudでは、収集・統合されたデータが「ユニファイドプロファイル」として一元化され、視覚的にわかりやすい形で表示されます。(下図参照)

ユニファイドプロファイル

このユニファイドプロファイルは、複数のデータソースから得られた情報を統合し、1つの顧客データとして整理・表示するものです。これにより、担当者は顧客の全体像を一目で把握でき、どのチャネルでどのような接触があったか、過去の購入履歴や問い合わせ内容など、詳細な情報を簡単に確認することができます。

この機能により、各部門間での情報共有が容易になり、顧客対応の一貫性を保つことができます。例えば、カスタマーサポート部門においては、過去のやり取りを統合して参照することで、顧客のニーズや問題を迅速に理解し、最適な解決策を提供できるようになります。

Data CloudでAI(Salesforce Einstein)を強化する

AIを効果的に活用するためには、「グラウンディング」と呼ばれる基盤となるデータの準備が不可欠です。グラウンディングとは、AIが正確に機能するための土台を整えるプロセスで、これによりAIの予測や提案の精度が大幅に向上します。

Salesforce Data Cloudは、このグラウンディングにデータを多様なデータソースから収集することで、さらに顧客を理解したEinsteinを使えるようにします。

例えば、顧客の購買履歴やWebサイトの閲覧データ、ソーシャルメディアでの行動データなど、さまざまな情報を統合することで、AIがより高度な分析やパーソナライズを実行できるようになります。これにより、直近顧客が購入した製品の名称を差し込んでパーソナライズされたメール文面を簡単に生成することも可能です。

結果として、企業は顧客に対してより効果的かつ的確なコミュニケーションを行うことができ、営業やマーケティング活動の効率と成果を大幅に向上させることができます。

Data Cloud Provisioningを無料で試す

Sales CloudやService Cloudのエンタープライズエディションやアンリミテッドエディションを利用している場合、追加のコストをかけずにData Cloudを利用でできます。この無償で提供されるサービスの正式名称が「Data Cloud Provisioning」です。

Data Cloud Provisioning無償ライセンスを利用するには、Salesforceの「Your Account」からご自身で簡単に登録が可能です。これにより、すぐにData Cloudの機能を試し、実際のビジネスでのデータ統合や活用方法を確認することができます。

下表はData Cloud Provisioningの利用上限です。

項目Data Cloud プロビジョニング
データサービスクレジット250,000
データストレージ1 TB
Data Cloud システム管理者1
Data Cloud 社内 ID ユーザー100
Data Cloud PSL1,000
インテグレーションユーザー5
補足: Unlimited Plus Editionでは、データサービスクレジットが 2,500,000に増加します。その他の条件は同じです。

※Data Cloud アカウントの無償提供に関する公式Helpはこちら

Data Cloud Provisioningの用語集

データストリーム
データストリームは、Salesforce CRMやSalesforce Marketing Cloud、Amazon S3、Google Cloud Storage、SnowflakeなどからデータをSalesforce Data Cloudに取り込むための機能です。取り込んだデータはデータレイクオブジェクト(DLO)に保存され、一部の項目についてはデータ型を変更できます。

データレイクオブジェクト(DLO)
データレイクオブジェクト(DLO)は、データストリームで取り込んだデータを保存する場所です。ここに保存されたデータは、後で分析や処理に使われます。

データモデリング
データレイクオブジェクトに保存されたデータは、データモデルオブジェクト(DMO)に自動または手動でマッピングできます。これにより、異なるデータソースからの情報を組み合わせて、仮想のデータオブジェクトが作成されます。

ID解決
ID解決は、異なるデータソースからのデータを結びつけ、顧客データを一つにまとめる機能です。どの条件が一致した場合に同じ顧客とするかを決める「一致ルール」と、データの優先順位を決める「調整ルール」を設定できます。ただし、この機能は統合された顧客IDを発行するものではありません。

計算済みインサイト
計算済みインサイトは、SQLやビジュアルワークフローを使って、Data Cloudに取り込んだデータからインサイト(洞察)を得るための機能です。これにより、チャネルごとのパフォーマンス評価や購買行動の把握が簡単にできます。